墜落は時間の問題だった。
動力部はすでに古代の神々が放った雷に破壊されている。
操作系も衝撃のせいで、ほとんどいうことを聞いてくれない。
俺の乗る小さなミニガレオン「ピッコラ」も、もう慣性で前進しているだけだ。
燃料となるフォースもほとんど残っていないだろう。
「……ここまでか」
いや。よくここまで逃げきれたというべきだった。
ピッコラを動かすための特技(マインド)に恵まれていたのは幸運だった。
読み書きや世界のことを無学な俺にいろいろと教えてくれた石工の親方には感謝してもしきれない。
そうでなければ工房の路地裏でとっくに俺は死体になっていだろうし、こんな世界の果てまで逃げきることもできなかっただろう。
4王国の外にまで逃げようとしたが無駄だった。
リスクを冒してトレジャーハンターたちの使っていたミニガレオンを盗み出したというのに、奴らときたらミニガレオンどころじゃない、完全武装の飛空戦艦スカイガレオンを持ち出して俺を追いかけてきたのだ。
それくらい追手の追跡は執拗だった。
最初は行きつけの酒場。飲み仲間が「事故死」したって話を聞いた日のことだった。
そいつからの預かりものを返そうと酒場を出たところで黒づくめの怪しい奴らに拉致されそうになった。
正体はわからない。所属も不明だ。
いったい全部で何人いるのかもわかりはしない。
命からがら逃げ延びて、だけどそれ以来、奴らは親方の工房まで監視するようになった。
自宅なんていつ踏み込まれるか知れたものではない。
だから石工の仕事は休みを取ったし、自宅には帰らず、宿を転々とすることにした。
一度は憲兵にも頼ったが、あいつらはまるであてにならなかった。
それどころか俺を犯罪者か何かと勘違いしているのか、一緒になって俺を追いかけ始めた。
だがそれで俺はピンと来た。
そして今は確信している。
所属はわからないが、スカイガレオンを所持できるのは国家だけだ。
つまり!
このフォレストアイランズを統治している4つの国家のいずれかが!
俺みたいなちっぽけな一職人を殺すためだけに!
総力をもって俺を追いかけてきているのだ!
(続く)